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欧州子会社が失速するとき、問題はいつもP&Lの前に始まっている

12 時間前
読了時間: 3分

JETROの最新調査(2026年1月)によれば、在欧日系企業の48.9%が今後1〜2年の事業展開を「拡大」と回答し、「現状維持」を初めて上回りました。

欧州は今、日系製造業・テクノロジー企業にとって最も重要な戦略市場のひとつです。しかし、拡大フェーズに入るほど、経営リスクの性質が変わります。「どこに進出するか」という問いから、「誰がどう動かすか」という問いへ。

その問いの答えを持っているのは、戦略文書でも組織図でもなく、現地で孤独に立つ一人のリーダーです。


二重の孤独という、見えないリスク

欧州で日系企業の子会社トップを務めることは、構造的に「二重の孤独」を抱えることを意味します。

本社からは「権限のない責任」を負わされ、数字の結果だけが問われる。一方、現地のドイツ人スタッフは率直な議論と明確な権限の所在を求める。日本的な「空気を読む」「波風を立てない」スタイルは、現地では「優柔不断」「意思決定が遅い」と受け取られます。

この二重の圧力の中で、現地トップは次第に本音を失っていきます。本社には「問題なし」と報告し、現地スタッフには「本社が決めたことだから」と言い続ける。誰とも本当の対話ができていない状態が、静かに続いていきます。

欧州子会社が失速するとき、最初に起きているのは数字の悪化ではありません。現地トップの「語る言葉」の喪失です。

なぜ表面化しにくいのか

エゴンゼンダーが2026年にドイツで立ち上げた「Leadership Dojo」の創設者たちは、「コミュニケーションスタイル・意思決定・リーダーシップへの期待の違いが、共通のゴールがあるにもかかわらず、本社と子会社の間に誤解を生んでいる」と指摘しています。世界トップクラスのエグゼクティブ人材会社が、日独Cレベル向けに「安全に本音を話せる場」を専門に設けなければならない—この事実が、問題の深刻さを物語っています。

当事者が「助けを求めること」を弱さだと感じているからこそ、問題は表面化しません。欧州事業を任されたトップは、本社から見れば「頼りにされているエース」です。その人物が「判断に自信が持てない」「板挟みで限界を感じている」とは言えません。報告書は「順調です」になります。

経済産業省のものづくり白書も、日系製造業の多くが「日本から駐在員を送り込む一方、本国からのガバナンスはほとんどない」という構造的問題を抱えており、事業規模が大きく地域が多角化するほど収益性が下がる傾向があると指摘しています。

これは能力の問題ではありません。構造の問題です。


何が変わると、状況は動くのか

欧州事業が「再び動き始める」瞬間に、共通していることが一つあります。

現地トップが「利害関係のない対話の場」を得たときです。本社でも現地スタッフでもない。評価する立場でも、される立場でもない。自分の判断と認識を、正直に言語化できる相手。

その場が生まれると、変化は驚くほど早く起きます。判断に根拠が生まれ、本社とのコミュニケーションの質が変わり、現地スタッフへのメッセージが一貫性を持ち始める。数字が改善するのは、その後です。


最後に、一つだけ問いかけさせてください

あなたが欧州に送り出したリーダーは今、誰と話していますか。

判断に迷ったとき、本社の期待と現地の現実が噛み合わないと感じたとき—その人は、本音を出せる場を持っていますか。

欧州事業の失速は、多くの場合、戦略の失敗ではありません。その問いへの答えが「誰もいない」「ない」であることから、始まっています。

 
 
 

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